壊れることを知り, 壊さないための研究を!そして新たなデザインへと!
建築鉄鋼や橋梁,インフラ構造物といった大型構造部材には,安全のため実稼働下で壊れないこと(耐破壊性能)が求められます。実稼働下で懸念される破壊シナリオは多岐にわたりますが,防がれるべき破壊事故が対象では,ビッグデータやAI学習の活用は望めません。構造性能を評価/設計するには,まず人知をもって破壊現象のメカニズムを真に理解し,構造性能から材料/接合部の特性までを相関づけることが必要なのです。
当研究室(材料構造健全性評価学領域,大畑研究室)では,「壊れることを知り, 壊さないための研究」を理念に掲げ,社会の安全・安心を守る最後の砦となる破壊評価技術の基盤創生,さらには新たな材料/接合部設計(デザイン)に導くための理論構築/先進シミュレーション技術の開発研究を推し進めています。
マルチスケールの破壊性能/特性を「つなぐ」階層的アプローチ
実稼働下での構造部材の耐破壊性能を,材料や接合部の特性から正確に予測できるでしょうか?(構造設計・安全性/健全性評価)さらには,所望の耐破壊性能を実現するには,材料や接合部にどのような特性が要求されるでしょうか?(構造機能・性能向上のための材料組織設計・制御フィードバック)これらに応える基盤学術として,構造部材性能から材料特性までを「マクロスケール」,材料特性から微視的構造までを「メゾスケール」と称し,異なる階層(スケール) の破壊性能/特性 を 相互・定量的に 橋渡すための科学・学問を追求しています。
先進の破壊シミュレーション技術開発
異なるスケール(階層)での破壊現象を相関付けるため,力学的観点のみならず材料学的・微視的観点から,破壊現象のメカニズムに迫ります(ローカルアプローチ)。破壊メカニズムを数理モデル化して数値解析手法に組み入れることで,微視組織/材料/構造の破壊挙動を捉えるシミュレーション技術の開発を進めています。鋼構造物とその溶接部をはじめ厚板/薄板の塑性加工,異種材料接合継手,液化天然ガス(LNG)貯槽容器,高圧水素パイプライン,原子炉圧力容器など,適用対象とその破壊シナリオは多岐にわたります。破壊モデルの使い分け/併用により,種々の破壊モード(延性・脆性・疲労・環境破壊)とその遷移・重畳までも捉えることを目指しています。